LEGO野生児(インドア系)の三無主義。

LEGOやナノブロックでなんか作る〜。

【ナノブロ】大聖堂

 

大聖堂(カテドラル)

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私は無神論者だが、社寺仏閣・宗教施設の類はわりと好きである。
宗教は否定するが、宗教が育んだ文化は尊重する。
坊主憎んで袈裟まで憎まず、である。 <若干間違えてる

 

大体、居住性を無視して装飾に特化したいにしえの巨大建造物なんてわくわくするではないか。

そもそも科学がオカルトや宗教と袂を分かったのは近代のことで、それまでは宗教が世界の成り立ちを説明していたのだ。
その時代に宗教を信じることは当たり前のことであり、特に非難するつもりはない。
現代において信じる人はどうかと思うが。

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興味があるとはいえ大聖堂についてさして詳しくない私だったが、ナノブロックで遊んでいるうちにうっかり大聖堂の構造を調べ出してしまい、大変なことに。
今回は超付け焼刃の生半可な知識で、数少ない読者さん全員を完全においてけぼりにするので皆さんしっかりと脱落して下さい。

 

上面。

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大聖堂は全体として十字架を模している。
各部の名称を図に表すとこんな感じだ。


   内
   陣

 袖廊 袖廊

   外
   陣

  西正面

 

下側にあるのが我々が写真などでよく目にする正面入り口である。
入り口は常に西側に作られるので「西正面」という。
(つまり上の画像は左が北になる)

十字架の下の方にあたるのが「外陣」、上の方が「内陣」である。
十字架の横木みたいな部分が「袖廊」(トランセプト)。

西正面の入り口から入ってすぐにある「外陣」は礼拝を行う広い場所。
昔は床には何もなくガランとしていたが、現在ではベンチが並んでいることが多い。

その先にある「内陣」は聖職者専用の空間で、一番奥はドーム状に丸くなっている。
ドームの中心は「アプシス」と呼ばれ、ここに主祭壇が置かれる。
いわば大聖堂の心臓部である。


外陣を縦に輪切りにしてその構造を示したもの。

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中央の背の高い部分が「身廊」。
礼拝のためのホールだ。
大聖堂は天に吸い込まれそうな高い天井とステンドグラスに降り注ぐ光によって神の国を実感できる様に作られている。
つまり身廊の内部空間こそが大聖堂の最大の見せ場なのだ。

しかし西洋の建築は基本的に石やレンガのブロックを積み上げる組積造である。

長い部材を自由に使える木造建築ならば柱で全ての重量を支え、窓をいくらでも広く取ることができる。
垂直な柱の上に水平の梁を載せれば荷重は柱を伝って真直ぐ下にかかる。

ところが組積造では壁全体で荷重を支えることになる。
そのために窓を大きく取ることは難しい。
しかも長い梁は使えないので窓の上端や屋根は全てアーチで支えなければならない。

アーチを使うと壁には垂直方向だけではなく。横に広がろうとする力(推力)がかかる。
これを支えるには壁を分厚く丈夫にするのが手っ取り早いが、この方法で天井の高い建築物を作るのはいかにも大変だし、窓も大きくは取れず、重苦しい作りになってしまう。

そこで推力を押さえるために考え出されたのがフライング・バットレス(跳び梁)である。
身廊の壁から少し離れた場所に「控え壁」(壁と言うより柱に近い)を立て、身廊の上方と控え壁の上方を斜めになったフライング・バットレスでつなぐ。
すると身廊の壁が横に広がろうとする力はフライング・バットレスから控え壁を伝って地面へと逃がされるのだ。
身廊と控え壁の間の空間は「側廊」として利用される。

画像の構造模型では黒い部分が「身廊」、薄灰色で柱状なのが「控え壁」、両者をつなぐ白色が「フライング・バットレス」。
身廊と控え壁の間を埋めている濃灰色が「側廊」である。

構造をわかりやすくするため、右側の控え壁とフライング・バットレスは取り外して少し離れた場所に置いてある。
フライング・バットレスが斜めになっている様子は残念ながら再現できなかったが、つっかい棒の役割を果たしていることはご理解いただけると思う。

外陣・内陣の外壁にはこういった控え壁が林立して大聖堂を支えているのだ。
大聖堂は荘厳な礼拝堂―つまりは内部空間のための建築物であり、それを支えるための構造物を剥き出しにした外部は不気味ですらある。

それは現代で言えばちょうど華やかなバラエティー番組のセットが外側から見るとベニヤ板や配線の乱雑な集積にしか見えないのと似ていなくもない。

だが大聖堂には凄まじい重量を支えるための構造美がある。
等間隔に並ぶ控え壁やフライング・バットレスの反復配列はどこか生物めいており、まるで恐竜の肋骨の様に美しい。

さらにこれらの構造を覆い尽くさんばかりに、大聖堂の全体には過剰なまでの装飾が施された。
控え壁には小尖塔が取り付けられ、それらの装飾はしばしば大聖堂が一端の完成をみた後も追加され増殖を続けた。


今回の作品ではパーツの種類が少ないという当時のナノブロの制約上、中央の尖塔がセンター位置から少しズレたのは残念だが、大聖堂に必要な構造物は一通り再現できたと思う。
6対のみながら控え壁とフライング・バットレスも備えている。

もっと巨大で精巧な大聖堂をつくれる人は大勢いるだろうが、めっちゃミニマムにまとめられて個人的には満足(制作当時は)。

 

制作は2008年12月。