製品をプチ改造29:魚の博物画
昔、魚の博物画は背景を付ける場合、陸に揚げた状態で描くことが多かった。
当時の人々は海中の光景というものを直接見たことがなかったからだ。
それを立体化してみた。
当時の絵はこんな感じ。
(画像は拾い物)
レゴ的にはフレンズ 「ハートレイク ハーバーハウス」(41094)のアシカの乗った岩礁部分をプチ改造。
ちなみに人々が水中の光景を見ることが出来る様になったのはウィリアム・ヘンリー・ゴッスの功績によるところが大きい。
彼は長期飼育の行える水槽を開発したからである。
ゴッスは著作「アクアリウム」で水中の奇観を紹介し、またロンドン動物園内の水族館(世界で3番目の水族館、あるいは世界で最初の「本格的な」水族館)でそれらを公開した。
奇怪なイソギンチャク等のひしめく光景は当時の人々にはさぞ物珍しかったことだろう。
当時は空前の博物学ブームであり、ゴッスの本は売れに売れた。
ゴッスは神学者ではないにも関わらず、非常にユニークなアイデアを提出している。
それがオムファロス仮説である。
ゴッスは地球の年齢が古いことを認めていたが、同時に聖書を信じてもいた。
そこで「神はあらゆるものをそれが以前から存在したかの様に作ったのだ」と解釈することにしたのだ。
つまり神が直接作ったアダムには母親などいない筈だが、それでも神はアダムを「母親から生まれた痕跡も含めて」作ったので、アダムにはへそがあった筈だ、と。
同様に、化石など「地球が何十億年も前から存在する証拠」も、創造の際に神が作ったことになる。
これは創造論への強力な擁護になる筈だったが、肝心の創造論者はこの説を「キモっ」と一蹴した。
だがオムファロス仮説は後のバートランド・ラッセルによる「世界五分前仮説」に影響を与えた。
世界5分前仮説は「世界は実は5分前に今の形で始まったのかもしれない」という仮説である。
この仮説はあらゆる証拠をはね返す。
「世界は昔から存在する」といういかなる証拠を提出したところで「その証拠も含めて5分前に作られたのだ」と再反論できるからだ。
まぁこういう理論ってアレよね…
ホラ吹き大会で相手がどんな凄いほらを吹いても「そういうおまえをわしゃ食った」と答える、みたいな…【註】
では世界5分前仮説は無敵ゆえに正しいのか?
…というとそんなことはない。
どうやっても間違いを証明できない、つまり反証可能性のない理論は科学ではない。
したがって議論の俎上に乗せるべきではない。
何でも説明できる理論は何も説明しないのと同じだ。
もしかしたら正しいのかもしれないが、それを証明する方法もまたないのだから。
【註:「そういうおまえをわしゃ食った」】
「天と地を 団子に丸め 手に乗せて ぐっと飲めども 喉にさわらず」
と詠んだ相手に
「天と地を 団子に丸め 飲む人を 鼻毛の先で 吹き飛ばしけり」
と返す、という類話もある。