共進化
キサントパンスズメガとアングレカム・セスキペダレ。
セスキペダレは蘭の一種で、20〜35cmにも及ぶ長大な「距」(きょ:花の後ろに突き出した中空の角状のもの)に蜜をたたえる。
ダーウィンはこの蘭を見て、「距の奥の蜜腺まで届くほど長い口吻を持った送粉者のガが自然選択されている」と予測した。
ダーウィンの死後、実際にその通りのガが発見された。
それがキサントパンスズメガだ。
これは蛾と蘭が共進化したことを示している。
ダーウィンはこう考えていた。
「あるガが長い口吻を持って、長い距をもつランから花蜜を吸えるとすれば、口吻が短いガより有利である。しかし、ある程度以上に口吻が長いと、ガは送粉者ではなく盗蜜者となってしまう。植物側としては送粉が必要であるから、それらのガでも送粉が行われるように更に長い距を持つような選択圧がかかる。以上の過程で、両者ともに口吻・距が長くなる選択圧が働く進化が起こった」
なお、近年では「長い距を持つ植物の進化において、送粉者との共進化ではなく、進化過程で送粉者が入れ替わることにより距の長さの不連続な変化が起こった」と説明する『送粉者シフトモデル』なる仮説も提唱されている。
これは共進化モデルやさらにはダーウィニズムを否定するものであると喧伝されることがあるが…送粉者シフトモデルが正しかったとしても、シフト前にあらかじめ、あるいはシフト後に急速に、蛾の口吻や蘭の距が長くなった理由は、どこまでも共進化でありダーウィニズムなのではないですかね…。
マクロな視点では非連続的に見える変化も、ミクロな視点では連続的なのだ。
そんなことは「ダーウィニズムに対するちょっとした注釈」(ドーキンスの弁)に過ぎない断続平衡説が非ダーウィニズムだと持ち上げられた空騒ぎの時に散々やったやん…。
セスキペダレの正面。
いつかキサントパンスズメガをレゴで作ってみようと思っていたのだが、最近たまたまこの写真集を格安で手に入れたのがきっかけで急にやる気を出してみた。
表紙と裏表紙がキサントパンスズメガ&アングレカム・セスキペダレ。
邦訳も出ているが高価な上、表紙は原書の方が好み…。
(画像は拾いもの)
ちなみにキサントパンスズメガ&アングレカム・セスキペダレは2017年に国立科学博物館で開催された特別展『大英自然史博物館展』に日帰りで駆けつけ、実物を拝んできた。
レゴでもキサントパンの口吻とセスキペダレの距を同じ長さに再現できれば良かったのだが、距の方がかなり長くなってしまった…。
キサントパンの口吻は体に対してちょうど適切な長さに出来たんだけどね〜…。